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おやじの肩車

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ああ おやじの おやじの肩車
ごっつい身体は 機関車だった
おれは汽笛を鳴らしたさ
ヒュルヒュル ヒュルルララ
垣根の向こう なにが見えるか言ってみろ
見慣れた町が見えるだけ
 魚屋下駄屋小間物屋駄菓子屋建具屋染物屋
 ちょいと横ちょの貸本屋
 見えない奥まで言ってたら
 酒焼け顔の左官屋が
 クツクツわらってた
ああ 昭和のおやじの肩車

ああ おやじの おやじの肩車
トニック匂った いがぐり頭
打ち上げ花火は川向う
ヒュルヒュル ヒュルルララ
浴衣のおれは おやじの額にしがみつき
夜空にひらく花を見た
 呉服屋靴屋材木屋ふとん屋ハンコ屋せんべい屋
 となり近所が勢ぞろい
 真夏の夜風の 焦げ臭さ
 鼻をくすぐる想い出が
 やたらになつかしい
ああ 昭和のおやじの肩車

いつもねだった肩車 いつか嫌って背中向け
 おやじは淋しく おれの肩
 叩いて おまえも いつの日か
 ここにかわいい子どもをさ
 乗っけるときがくる
ああ 昭和のおやじの肩車
ああ つなげる時代の肩車
ああ おやじの おやじの肩車

(2023.7 改)

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