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きみに紡ぎし歌

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そのむかしの色は 
モノクロのグラディーション
桜の花色は 
そこだけは薄紅色(べにのいろ)

縁側に並んで 
ただ黙って香りを
楽しみお茶を飲み
阿吽(あうん)の呼吸になり
 
だんだんと咲く様(さま)を
眺めて弥生月(やよいづき)

何年ものあいだ
見続けてきたのは
赤い屋根に立つ
風見鶏も同じではないだろうか

若木(わかぎ)にたよりなく
そうとて、わたしらも
同じくして育ち
年々(ねんねん)と楽しむ

背丈にもなったとて
花芽少なくとも
もう、乙女のようだ
愛しき桜よ、咲けと

ようように見上げれば
卯月八日(うづきようか)に散りて

ふたりの想いでは
この家の庭から
桜の木と歩み
やがて、セピア色のアルバムになる

「桜の木の下」の
歌をうたいながら
揃いの指輪見て
ゆく先に微笑む

きみの紡ぎし歌は
穏やかに、穏やかに奏でることだろう

ぺん

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